広島大学メールマガジンでは、メールマガジン限定のスペシャルコンテンツとして、あるテーマに焦点をあて、本学の実績や取り組んでいること、これからの挑戦等について、深掘りした特集号を配信します。


 今回は、文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」による5年間で55億円の支援のもと、本学が推進している異分野融合エコシステムの形成にかかる取り組みについてお届けします。


 本学の強みである放射光による物質の「視える化」技術を核に、企業や自治体、国内外の大学と連携しながら新たな価値を創出する取り組みを、「異分野融合研究」、「最先端研究設備の戦略的整備」、「研究開発マネジメント人材」、「社会から信頼される研究」の4つの視点からご紹介します。

1. 専門を越えた出会いが新たな発見と価値を生む「異分野融合研究」

 次世代医療を支える分析技術や、新しい半導体材料の研究、食物アレルギーの負担軽減につながる食品の開発。こうした研究成果の背景には、異なる専門分野の研究者が知識や技術を持ち寄り、新たなアイデアを生み出す「異分野融合」があります。


 本事業では、放射光科学を核として、複数の研究分野が連携する研究体制を構築しています。分野の壁を越えた研究により、新たな研究テーマや技術の創出を加速するとともに、企業や自治体との共同研究を通じた社会実装を目指しており、すでに医療・材料・食などの各分野において、社会課題の解決や新たな産業の創出につながる研究成果が生まれています。


研究成果の例

パーキンソン病の発症メカニズム解明へ

本学の放射光技術を用い、パーキンソン病の原因となるたんぱく質が異常な凝集体を形成する直前の分子構造を世界で初めて生理的環境に近い条件で明らかにしました。神経変性疾患の発症メカニズムの理解や、新たな治療法の開発につながります。

研究成果詳細はこちら

高温超伝導の仕組み解明へ

放射光と紫外線レーザーを用いた精密解析により、高温超伝導が生じる舞台となる「奇妙な金属状態」の特徴を初めて可視化しました。高温超伝導の起源の解明に加え、省エネルギー技術や量子コンピューターなどの量子技術への応用が期待されます。

研究成果詳細はこちら

食物アレルギーの負担軽減へ

本学のゲノム編集技術を用い、卵アレルギーのある方への新たな選択肢となるアレルギー低減卵を開発しました。実用化に向け、治験の実施や関係省庁との調整が進んでいます。

研究成果詳細はこちら

2. 新たな挑戦を後押しする「最先端研究設備の戦略的整備」

 前章でご紹介したような、優れた研究成果を生み出すためには、研究者の発想だけでなく、その挑戦を支える研究環境も欠かせません。

共用の研究設備を利用する研究者

 

 本学では、学内の研究設備を戦略的に整備・運用し、学内外の研究者が分野や所属を越えて最先端の設備を活用できる環境構築を目指し、2026年4月にコアファシリティ(※)マネジメントセンターを新たに設置しました。研究設備の整備・更新・運用を全学的な視点でマネジメントし、持続可能な研究基盤の構築と研究力向上を推進しています。


※コアファシリティ:研究組織全体として研究設備・機器を整備・共用・高度化する仕組みを備えた研究基盤


 設備を共用することで、研究のスピードや精度を高めるだけでなく、これまで接点の少なかった研究者同士の交流や新たな共同研究も生まれています。また、企業との共同研究や技術開発にも活用され、大学の研究成果を社会へつなぐ重要な基盤となっています。


事業の概要

 2026年7月には、研究者が挑戦的な研究に取り組める魅力的な研究環境の整備を目指す事業である、文部科学省「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」に採択されました。3年間で約13億円の支援により中国四国地区の研究基盤強化を目指します。

詳細はこちら

 

 研究設備の共用・高度化は、研究環境の整備が難しい若手研究者にとって特に重要です。また、学生にとっても、専門スタッフの支援を受けながら最先端の研究設備による高度な分析技術やデータ活用を学ぶことで、高度な専門的知識と能力やデジタルスキルを身に付け、研究現場で実践的な経験を積むことができます。

コアファシリティマネジメントセンターのHPはこちら

3. 研究と社会をつなぐ「研究開発マネジメント人材」

 優れた研究成果を社会へ届けるため、その挑戦を支える専門人材の登用も進んでいます。


 本学は、2026年6月、文部科学省「研究開発マネジメント人材に関する体制整備事業(体制強化機関)」に採択されました。全38件の申請のうち、採択機関は本学を含め2件のみで、5年度間、上限額3,400万円の支援経費が毎年度支給されます。

 本事業では、研究成果の創出から社会実装までにおける研究活動を支える研究開発マネジメント人材を育成・配置します。研究と社会をつなぎ、大学の価値を最大化する体制を構築することにより、大学全体の研究マネジメント機能を強化します。

本事業で体制を強化するURA(University Research Administrator)が企画する、研究者・大学院生向けの対話イベント「研究井戸端トーク」。異分野の研究者間の気軽な交流を促進し、新たなアイデアの創出が期待されます。

 

 こうした研究環境は、若手研究者らにとって、多様な専門職と協働しながら研究を進める実践の場となっています。研究者間だけでは得られない視点に触れることが、コミュニケーション力や主体性を育み、研究成果を社会へつなぐプロセスへの理解の深化にもつながっています。

採択時のお知らせ記事はこちら

4. ELSI/RRIが広げる「社会から信頼される研究」

 AIやゲノム編集など科学技術が急速に発展する中、倫理的・法的・社会的な課題(ELSI:Ethical, Legal and Social Issues)に向き合い、社会との対話を通じて責任ある研究・イノベーション(RRI:Responsible Research and Innovation)を進める取り組みが世界的に広がっています。


 本学は、2023年にELSI/RRIの取り組みの強化を目的とした全学的組織である共創科学基盤センターを設立し、ELSI/RRIの視点を取り入れた研究活動を推進しています。特に、大学院生・ポスドク・若手研究者を対象に開催したELSI/RRIへの理解を深めるためのセミナーやワークショップでは、異なる分野の参加者同士が交流できる機会を提供しており、多様な立場の人々との意見交換を通じて、課題設定・解決能力やコミュニケーション力、表現力を育み、社会とともに研究を進める視点を養っています。

ELSI HIROSHIMA ワークショップ 2026での一幕

共創科学基盤センターのHPはこちら


 また、公益財団法人上廣倫理財団のご寄附により大学院人間社会科学研究科に設置された上廣応用倫理学講座では、多様な研究グループとELSIの共同研究に取り組んでおり、副講座長の澤井 努教授が、急速に進む胚研究に対し倫理的対話の必要性を提言した記事(Correspondence記事)が、英国の科学誌Natureに掲載されるなど、顕著な成果をあげています。

Nature掲載記事の詳細はこちら

最後に

 今回の特集では、「人・知・資源」が循環するイノベーション・エコシステムの実現を支える中核を担う取り組みをご紹介しました。


 社会課題がますます複雑化する中、大学だけで新たな価値を創造することは容易ではありません。企業や自治体、研究機関をはじめとする多様なパートナーとの連携によってこそ、新たな研究や技術、イノベーションが生まれます。本学では、共同研究や技術相談、人材交流、研究設備の共用などを通じて、さまざまな組織・機関との共創を積極的に進めています。


 また、本学には幅広い学術分野の研究者や充実した研究基盤、産学官連携の実績があります。皆様が抱える課題や挑戦に対し、ともに考え、ともに研究し、ともに社会実装へとつなげていくパートナーとして、ぜひ本学との連携をご検討いただきたいと考えています。


 本特集が、本学の研究力や共創の可能性に触れていただく機会となり、皆様との新たな対話や連携、共同研究の創出へとつながることを期待しています。社会課題の解決と新たな価値創造に向け、ともに未来を切り拓いていきましょう。

広島大学J-PEAKS特設サイトはこちら

次号は、9月9日(水)頃に配信予定です!

広島大学メールマガジンバックナンバーはこちら
広島大学公式ウェブサイトはこちら

※本メールの一部または全部を、無断で複写・転載することを禁止します。

■編集・発行
 国立大学法人 広島大学メールマガジン運用プロジェクト
 
〒739-8511 東広島市鏡山一丁目3番2号
 E-mail: u-st-project@office.hiroshima-u.ac.jp