広島大学メールマガジンでは、2か月に1度、メールマガジン限定のスペシャルコンテンツとして、あるテーマに焦点をあて、本学の実績や取り組んでいること、これからの挑戦等について、深堀りした特集号を配信します。


 今回のテーマは「DX時代を生き抜くデジタル・半導体人材育成の最前線」です。特に、半導体に関して本学は、1989年から稼働する世界有数のスーパークリーンルームを有し、また東広島市に開発・製造拠点を置くマイクロンメモリジャパン株式会社との連携を背景に、半導体産業技術研究所を中心として研究開発と人材育成の両面で長く世界をリードしてきました。デジタル・半導体に関連する幅広い人材育成の取り組みをお届けします。

 2019年に内閣府が公表した「AI戦略2019」では、さまざまなレベルでの数理・データサイエンス・AI教育の必要性に言及されています。


 「数理」とは、さまざまな現象を数学的モデルで表し、シミュレーションによる最適化や予測を行うもので、天気予報・防災などに活用されています。「データサイエンス」はビッグデータなどを使って課題解決や新たな価値を生み出すもので、パーソナライズされた広告機能や、交通量予測などに幅広く応用されています。「AI」は機械が既存データから学習し作業を遂行する技術で、自動運転技術や翻訳などに生かされています。このように、数理・データサイエンス・AIは私たちの生活に密接にかかわっています。

 現在、文部科学省では、初級のリテラシーレベル、中級の応用基礎レベル、上級のエキスパートレベルの3段階に応じた数理・データサイエンス・AI人材の育成を推進しています。


 広島大学では、3段階全てのレベルに沿った人材育成の取り組みを幅広く展開しています。

1.文系・理系を問わず、学部生全員がリテラシーレベルの数理・データサイエンス・AIを修得【初級】

 広島大学では「AI戦略2019」の公表以前から、情報やコンピュータに関する科目を開設していました。しかし、必修化の有無や卒業要件への反映は学部ごとに異なっていました。


 2020年度からは「情報・データサイエンス科目」を教養教育科目として新設し、2021年度以降、全学共通の必修科目としてカリキュラムを再構築しました。さらに、社会で求められるリテラシーレベルの数理・データサイエンス・AIを体系的に習得できる枠組みとして、「情報・データサイエンス・AIパッケージ」を策定しました。本パッケージを修了した学生数は、2024年度末時点で10,403人となり、数理・データサイエンス・AIの素養を持つ学生が着実に増加しています。

 本パッケージは、2021年の文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)」に認定されました。本制度は、デジタル時代の「読み・書き・そろばん」である数理・データサイエンス・AIに関する大学等の教育プログラムのうち、優れた教育プログラムを文部科学大臣が認定/選定することによって、大学等の数理・データサイエンス・AI教育を後押しする制度です。本学は制度の開始年度に認定を受けており、デジタル人材の育成にいち早く注力してきた結果が、早期認定につながりました。

 さらに、2024年度には、特に優れたプログラムとして「数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)プラス」に、中国・四国地方の国立大学では初めて認定されました

文部科学省 数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度 ロゴマーク

認定有効期限:2026年3月31日まで

本学の「情報・データサイエンス・AIパッケージ」の詳細はこちら

2.数理・データサイエンス・AIを活用して課題解決に取り組む応用基礎レベルのスキルを身に付けた学生を多数輩出【中級】

 学部生全員にリテラシーレベルのスキルを身に付けさせる一方で、次世代の産業と社会を支える高度な人材を輩出する取り組みも進めています。


 2022年度、文部科学省「魅力ある地方大学の実現に資する地方国立大学の定員増」に、本学の「広島が牽引する『デジタル田園都市国家構想』~DX 推進人材が切り拓く地方創生~」が全国で初めて選定されましたさらに2023年度には、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構の「大学・高専機能強化支援事業『高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援(ハイレベル枠)』」に、本学の「高度な学術研究や専門知識に裏打ちされた研究・開発能力を持ち、デジタル技術開発やDXの推進を力強く牽引する高度情報専門人材の育成」が中国・四国地方で唯一選定されました。


 ハイレベル枠の採択を受け、既に増員した情報科学部のさらなる定員増を含め、デジタル・半導体関連の定員増員計画が以下のとおり進行しています。


 情報科学部は、国立大学初のデータサイエンスとインフォマティクスを両輪とする文理融合型の学部として、2018年度に開設。現在は、通常の履修モデル(「基礎履修モデル」)に加え、他学部開講科目の履修や他学部教員と協同した卒業論文指導を実施する「融合履修モデル」、卒業論文を課さず、企業への長期インターンシップを実施する「実践履修モデル」の3履修モデル制を導入しています。

情報科学部HPはこちら

 「実践履修モデル」の長期インターンシップは合計8か月間におよび、学生は企業現場での実践を通じて、社会から求められている知識やスキル、課題解決力、社会人としての振る舞いを身につけます。学生が大学に在籍しながら企業での実務を経験する「コーオプ教育(Cooperative Education)」の導入は、国立大学では初の試みです。学生の受け入れにご協力をいただく企業も増加傾向にあり、学生・企業双方から高い評価を得ています。

長期インターンシップの様子


長期インターンシップ生を受け入れた企業の声】

 参加学生は内製化チームの活動を通じて一定の知識・スキルを身に付けたと思います。次年度は本人の「データ分析をしたい」という意向を踏まえ、従事してもらう業務を検討していきます。今回のインターンシップのおかげで、社内でも若手育成への意識が高まりました。今後も大学と協働し、優秀なデジタル人材育成に取り組んでいきます。

株式会社ひろぎんホールディングス 執行役員 DX統括部長

石原 和幸様


長期インターンシップを経験した学生の声】

 一社員として現場の業務に携われるのが、長期インターンシップの魅力。派遣先では、業務効率化に向けたアプリの開発に向けて外部ベンダーと要件定義を行ったり、生成AIを導入するための社内セミナーにパネラーとして登壇したりしました。プログラミングのスキルを活かしてIT分野で働くと聞くと、エンジニアのイメージがありましたが、社内のDX推進やインフラ業務など、幅広い進路があるのだと実感しました。

沖 耀太さん(派遣先:中国電力株式会社)

他の学生や、参画企業の声はこちら。コーオプ教育への参画企業を募集中!


 工学部では、2025年度から第二類(電気電子・システム情報系)に「半導体システムプログラム」を新たに設置。今後のAIを活用する世界の発展を支える半導体システムの基礎からアプリケーションまで、全てを学ぶことができる日本唯一のプログラムです。本学は、半導体の研究で長年世界をリードしてきた「半導体産業技術研究所」や国内最大級のスーパークリーンルームを有しています。充実した研究環境のもと、学生は学術研究と半導体デバイス研究開発の両方を経験することができます。半導体中心の尖った技術力に加え、幅広い応用力を養うことで、社会実装や新たな価値創出に対応できる人材を育成します。

半導体システムプログラムの詳細はこちら

 

 情報科学部、工学部第二類の取り組みの他、全学部生を対象として、データ分析やプログラミングなどの応用的な知識を広く学ぶ「AI・データサイエンス応用基礎特定プログラム」を開設しています。


 本プログラムは、単なるデータサイエンスの知識の習得だけでなく、それを自らの専門分野の研究に、文系・理系を問わず応用させることを目指しています。全学共通の授業科目と各学部指定の専門教育科目を組み合わせたカリキュラムにより、学生の専門分野の特性に合わせた実践力を身に付けます。


 このプログラムは文部科学省の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(応用基礎レベル)」に認定されており、2024年度末までに63人が登録しています。

文部科学省 数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度 ロゴマーク

認定有効期限:2027年3月31日まで

「AI・データサイエンス応用基礎特定プログラム」の詳細はこちら

3.デジタル技術開発やDXの推進を牽引するエキスパートレベルの人材養成【上級

 大学院先進理工系科学研究科では、従来の情報科学プログラムに加え、DX科学プログラム、半導体システムプログラムを新設。高度な学術研究や専門的知識に裏打ちされた研究・開発能力を持ち、デジタル技術開発やDXの推進を力強く牽引する高度情報専門人材の養成を目指しています。アリゾナ州立大学や、パデュー大学など世界の有力大学とも連携し、カリキュラムの共同開発や相補的な教育・研究、教員・学生の交流を行います。


 2025年9月には文部科学省「大学教育再生戦略推進費 半導体人材育成拠点形成事業(enSET)」および「令和6年度補正 大学教育再生戦略推進費 半導体人材育成拠点形成事業(半導体人材育成拠点形成のための設備整備事業)」に、本学が岡山大学、山口大学、愛媛大学と連携して提案した「中四国半導体人材育成加速プログラム -中四国VISTA(Value-Integrated Semiconductor Talent Acceleration)-」が採択されました。本事業は、半導体産業を取り巻く関連分野を含めた体系的かつ実践的な教育プログラムを構築し、幅広い応用やユースケースまでを俯瞰できる高度人材を育成する拠点を形成することを目的としています。


 新たに構築するプログラムの修了者には認定バッジを付与し、就職活動などの際に半導体に関するスキルの指標として活用することを計画。半導体分野を直接の専門としていない学生にも、半導体産業に関わるキャリアパスを意識させる教育体系の構築を目指します。マイクロンメモリジャパン株式会社をはじめ、多くの企業・団体と連携し、サプライチェーン全体を見据えた教育を展開することで、10年間で3,000人の人材を育成し、未来を創造する中四国半導体人材育成拠点の形成を目指します。

「中四国半導体人材育成加速プログラム -中四国VISTA(Value-Integrated Semiconductor Talent Acceleration)-」の詳細はこちら

 また、全大学院生を対象としたエキスパート人材育成の取り組みとして、「AIOpsエンジニア育成特定プログラム」を開設しています。AIOpsとは、AIを活用したシステム運用を指します。これらの技術を深く理解し、将来起こり得る課題の解決に向けて発展的な技術開発を行うための基礎力ならびに応用力を身に付けることを目的としており、2024年度末までに18人が登録しています。

「AIOpsエンジニア育成特定プログラム」の詳細はこちら(「大学院特定プログラム」の項目をご覧ください)

最後に

 広島大学は、リテラシーレベル、応用基礎レベル、エキスパートレベルそれぞれの段階に応じたデジタル・半導体関連の教育プログラムの構築を進めており、産業界や自治体、他の研究機関と連携しながら、地域や日本、世界の未来を担うデジタル・半導体人材育成に取り組んでいます。


 今後も、社会の変化や産業界のニーズに柔軟に対応しながら、広島大学発のデジタル・半導体人材が多様な分野で活躍することを通じて社会に貢献してまいります。

次号は、2026年1月14日(水)頃に配信予定です!

広島大学公式ウェブサイトはこちら

※本メールの一部または全部を、無断で複写・転載することを禁止します。

編集・発行
 国立大学法人 広島大学メールマガジン運用プロジェクト
 〒739-8511 東広島市鏡山一丁目3番2号
 E-mail:
u-st-project@office.hiroshima-u.ac.jp